自分の出会いなのに落ち着かない…なんて。
Yさんの怒りの矛先を私に向けねばならない。
が、その先の言葉が出ない。
私はもう理由を説明することに、うんざりしていた。
私はべつに、仲のいいフリをしていたわけではなく、Yさんを騙していたのではないことだけを、とにかく説明した。
実際、私たちは最後まで、激しい口論もしなければ、皿や花瓶を投げつけあうこともなかったのだ。
「アンタの浮気だって言えば、みんなが納得するよ」帰りの車の中で、夫はフテていた。
私は卑怯にも、それだけは口外しないよう、彼に固く約束させていたのだ。
Hさんのことをバラしたら、Hさんも、ゴタゴタに巻き込むことになる。
そんなの、たまらない。
ズルイと言われようと、そんな煩わしさからは逃げてしまいたかった。
彼と肉体関係はなかったし、すでに音信不通に近い状態だった。
Hさんに、「オレの妻を返せ」と、夫が迫ったところで、「ボクはNさんとは深い関係でもないし、離婚なんて、これっぽっちも望んでませんよ」と、笑われるのがオチだろう。
夫は私とHさんが深い仲だと思い込んでいた。
そうではないということを夫が知ってしまったら、離婚できないという展開になってしまうかもしれない。
それは困る。
私は離婚というリスクをしょっても、夫という心身ともに重い荷物を降ろし、身軽になって、ゴキブリのいない住まいや自分の健康、そして仕事を取り戻さなければすまない気持ちになっていた。ありがたいことに、もう1人の証人になってくれたRチャンは、怒ったり、質問責めにしたりはしなかった。
「いいの、ほんとに?後悔しない?」彼女はそれだけを何度も私にたしかめてから、きちんとサインをしてくれた。
「私はそんな、勇気ないなあ」これまた、ビックリ。
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